もしも明日、私が死んだら君はどうするんだろう。そんなことを考える日が増えてきた。隣に座る君の横顔を眺める。風で髪が揺れる。向こうから溢れてくる光に目を細める。草の匂いがする、君の声が響く。生きている、と感じる。不思議だ。君を見ていると私は生きていると感じる。ひとりだと気が付きもしなかった風を心地よいと思う。ひとりでは見ようともしなかった光をあたたかいと感じる。ひとりでは関わろうと思わなかった人びとを愛おしいと感じる。もしも明日、私が死んだとしてもそれらがずっと存在し続ければいいのにと思う。君を通して見る世界はいつも輝いていて、そしてきれいだ。だから、それができる限り長く続いていて欲しい。君がいる世界がずっと美しいまま続けばいいと思う。もしも明日私が死んでも、君が…ずっと幸せでいてくれたらいいなと願う。

自分が死ぬことに恐怖や後悔はない。むしろようやく楽になれるのだと思う。今までよく頑張ったと思う。それでも残されるひとたちの事を考えると少し胸が苦しくなる。人びとの為に私にできることは全部してきたつもりだ。人に言わせれば、私はいつも物事に真っ直ぐに向き合っているらしい。みんなは私を優しいひとだと思っている。だけど、本当はそんなことない。ただ私が弱いから見捨てることが出来ないだけ。目を逸らすことが出来ないだけ。他人を切り捨ててまで生きようと思わないだけ。信念や理想がある訳じゃない。でも私が身を削ることで誰かが幸せになるのならそれがいいと思う。もしも私が強かったら、自分のことだけを考えてすべてを無視して死んでいたかもしれない。私が弱かったことでなにかいい事があったのだろうか。誰かの為と思ってしてきたことが、本当にその誰かの為になっていたのだろうか。そうだったらいいと思う。私の弱さも苦しみも、それが誰かの為になっていたのならいいなと思う。

君は絶対に踏み入ってこない。なにか言いたい顔をして、でも何も言わない。もしかしたら怖いだけなのかもしれないね。だけどそれでいい。君にはずっと隣にいて欲しい。なにも知らないような顔をしてただ笑っていてくれればいい。今はそれだけでいい。私のこの苦しみが全部気のせいだと思わせてくれる。君を見つめていれば私のことは忘れていられる。そういう事にさせて欲しい。本当の事なんてどうでもいいんだ。ただ、君がいて、私がいて、私は確かに君に救われていたっていう事だけがあればいい。それに言葉なんていらない。現実でも事実でも、救いでも祈りでもなんでもいい。それだけがあればいい。それだけを持っていくから。 いつか、いつか私がいなくなっても誰かの隣で笑っていて欲しい。私はこれまで何回も君の笑顔に救われてきた。君は絶対に踏み入ってこないし、離れもしない。ずっと隣にいてたまに話をしてくれる。私の苦しみとは関係ない話。その話が私は大好きだった。世界には確かに幸せがある。幸せに生きているひとがいる。いろいろなことを感じて考えて、生きているひとたちがいる。それを知ると途端に世界が愛おしいものだと思えた。なにより君が笑っているから、だからきっとここは素敵な世界なんだと思えるんだ。ねえ、君が隣にいてくれるだけで私はずっと救われていたんだよ。私はきっともうすぐいなくなるけど、だから君はこれからも生きて誰かと一緒に笑っていて欲しい。私じゃない誰かを救ってあげて欲しい。もしかしたら君にとって私は有象無象のひとりだったかもしれないけど、私にとって君はたったひとつの光だったんだよ。私との思い出が君をあたためる光になっていたらいいな。 ねえリズ、私がいなくなっても君はきっと大丈夫だよ。君のその優しさは必ず誰かを救うから。楽しいこと、嬉しいことを分かち合える君の周りにはきっとたくさんのひとが集まるから。だから大丈夫だよ。寂しくないよ。私がいなくなっても君は生き続けてね。もしも寂しくなったら周りを見てみて、君を支えてくれるひとがきっといるから。どうか君の優しさで誰かを救ってあげてね。死んでいく私のことなんか気にしないで、これから新しく出会う人たちを大切にしてね。大切な人たちを笑顔にしてあげてね。君は悲しみが分からないと言っていたけど、そんなことはないんだよ。悲しみが分からなくても君はそれを分かろうとしている。なにより悲しみが存在することを知っている。悲しみや苦しみに踏み込む恐怖を知っている。だから君は優しくいられるんだよ。大丈夫、分かろうとすることを恐れないで。なにもなくたってただ隣にいることができる。私はそんな君のことが大好きなんだ。そうやってこれからも生きる君の未来を夢見させて欲しいな。私の大好きな君でずっとい続けてね。 リズ、ずっと一緒にいてくれてありがとう。私をたくさん救ってくれてありがとう。たくさんの幸せをありがとう。なにも返せなくてごめんね。君のおかげで幸せだった私がいるという事が君の支えになればいいな。ねえ、リズ?悲しくても寂しくても苦しくても、それでも君は生きていくんだよ。私のことなんか忘れてもっと幸せな世界で生きてよ。これが私のわがままだって知っている。ごめんね。でももう限界なんだ、ずっと頭が痛くて胸が苦しいんだ。君を通して見る世界はすごくきれいで素敵なものだった。だけど、私には少しだけ重すぎたんだ。リズ、世界がきれいだと教えてくれてありがとう。風や光や生きているひとたちを愛おしいと思わせてくれてありがとう。ありがとう、って思って死ぬことが出来る私は幸せだね。もしかしたら君は苦しむかもしれない、これから寂しさや悲しみが君を襲うかもしれない。だけど大丈夫だよ。私との思い出が君の支えになればいいな。私が死ぬのは悲しいことじゃないんだ。だから私の分も笑っていてね。リズ、こんな私だけど君の幸せを願っているよ。あなたの為に世界の幸せを願おうと思うよ。君の幸せをずっと願っているよ。君の人生が優しくてあたたかくて幸福でありますように。君が生きる美しい世界が…どうかずっと、永遠に続きますように。

さようなら、リズ。もしも、もしもまた会えたら…また、君の話をたくさん聞かせてね。